ベトナム人相手に威張る日本人
もうお店に来ないと言っていたのになぜかベトナム人のお店に居座り、威張り続けていた日本人のおじさんの話
ホーチミンの日本人街にある日系レストラン(ベトナム人オーナー)での食事中、日本のテレビが流れているので自分はそれを見ながら食べていました。
カウンター席に座っていたのですが、しばらくするとテレビを観ていた方向の反対側から机をバンバン叩いて大声で話している日本人の声が聞こえて振り返りました。
「もーう、このお店には来ませーん」
50才前後のおじさんです。
焼酎のボトルが見えたので、お酒を飲んで酔っ払っているようです。
カウンター席には自分とそのおじさんしかおらず、そのおじさんは店の女将さん(ベトナム人女性)と板前さん(ベトナム人男性)と3人でもめているようです。
どうやら若い板前さんが揶揄 う発言をしたようで、それがおじさんの癇 に障ったようです。
ベトナム人の女将さんや板前さんはしきりに謝っているのですが、日本人のおじさんの興奮は止まりません。
「もうこのお店には来ない」「俺はそういう男だから」と繰り返しています。
傍から見ていた自分は心の中で「(だったら今すぐ立ち去り、この後に来なければいいだけで、わざわざ口に出す必要はないだろう)」と思いながら眺めていました。
再び謝るベトナム人の女将さん。
酔っ払った日本人の暴走が始まります。
「この板前を今すぐクビにしろ」と怒鳴り散らしています。
お店にボトルキープをしているような人なので、自分よりもこのお店との関係が深いのだろうから、
女将さんと板前さんが親戚関係であることを知っていても良さそうなのに・・・
経営視点で考えると、そのおじさんがいなくなることは酒癖の悪い客が一人減るだけですが、
板前さんを失うことは大きな戦力ダウンです。
日本人のおじさんは、若いベトナム人の板前さんに対して
「おまえは俺よりも優れていると思っているのか」
と威張り始めました。
少なくとも人間性はおじさんより、女将さんと板前さんの方が立派だと心の中で思いました。
厨房から出てきて、日本人のおじさんの隣りに行き、深々と頭を下げる若いベトナム人の板前さん。
この後からおじさんの気色悪さが発揮されていきます。
おじさんは板前さんを許すわけでもなく、店に留まりました。
雨が降ってきたということも影響したようです。
(なので、自分もしばらく居座ることになります。)
自分は再びテレビに視線を移すのですが、時折、おじさんの言動が目や耳に入ってきます。
女将さんと板前さん以外のスタッフの機嫌を取ろうと、猫なで声で話しかけています。
けれど、他のスタッフたちも先ほどの一部始終を目撃していたので構ってくれません。
姉妹店からの使いでやってきたスタッフならば大丈夫だろうと話しかけていたのですが、
忙しいので構ってくれません。
今日は休みで、外へ遊びに出かけていたスタッフさんが店に戻ってきて、
彼女ならばと話しかけていたのですが、雨に濡れてビショビショになってしまっていたので、すぐに立ち去られてしまいました。
おじさんの孤立はしばらく続きました。
見かねたのか、謝罪の意なのか、
しばらくして板前さんが「ネギトロをサービスするから食べないか?」とおじさんに持ちかけました。
おじさんの「サービス」という聞き返しだけが聞こえてきました。
その後、会話はなかったはずです。
しばらくして自分が会計を済ませて店を出るときにおじさんを見たらネギトロを食べていたので、どうやら応じたようです。
お金持ちなのかもしれませんし、職場での地位も上なのかもしれませんが、
「カッコ悪い人だな」という印象のまま自分はその店を去りました。